社長 企業 卸売・小売

【株式会社ティムコ】
酒井 誠一社長インタビュー

【株式会社ティムコ】<br>酒井 誠一社長インタビュー

酒井社長の学生時代についてお聞かせください。

小中学校の間はほとんど勉強をせず、工作や楽器演奏に打ち込んでいました。中学時代には先輩とバンドを組むなどしていましたが、高校受験の前に、初めて勉強らしい勉強を始めました。通い始めた予備校が厳しいところで、人としての在り方を大いに学んだ時期でした。

高校に入ってからも音楽に打ち込んでおり、当時の仲間には、現在ミュージシャンやプロデューサーとして活躍している者もいます。

大学では、幼少期からやっていたスキーのサークルに入りました。厳しいトレーニングや合宿などもあり、これも自分の成長にとって貴重な経験となりました。

富士ゼロックス株式会社(現・富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)から株式会社ティムコへ入社された経緯と、入社を決断された理由を教えてください。

私が富士ゼロックスに入社したのは1991年です。バブル景気の名残がある時代で、雇用情勢は売り手市場でした。それゆえ私のような者でも入社できたのですが、研修プログラムが非常に充実しており、入社から約6か月間、新卒向けのOFF-JTで多くを学びました。その間に出会った同期との絆も深く、今でも付き合いがあります。

研修後に配属されたのは、赤坂の大きな営業部署で、ゼネコンや電機メーカーを担当させていただきました。この部署の先輩方が素晴らしく、所属していた期間は短かったものの、この時に身についたものが、今の私の仕事に対する向き合い方をつくり上げました。私の身体の半分は富士ゼロックスでできていると言っても過言ではないほどです。

そのようななか、父が経営する株式会社ティムコへの入社の誘いがありました。
父の会社が株式の上場(店頭登録)を考えており、上場準備のメンバーとして会社に来てほしいという理由でした。上場審査が厳しいため、辞めにくい立場の人材として選ばれたという背景もあったと思います。私は富士ゼロックスに生涯勤めるつもりでいましたが、これも新たな経験と考え、ティムコへの入社を決意しました。

入社後は、上場準備といっても知らないことばかりで、決算書の読み方や株式市場の仕組みなど、さまざまなことを勉強しながら取り掛かりました。1996年6月に店頭登録が実現しました。その後は、営業や総務的な業務まで、さまざまな業務を行ってまいりました。

成長を続けるために、若手のうちから意識すべきことは何だとお考えですか。

自分の専門性

人それぞれ得意分野は異なると思いますが、自分の得意分野を見つけ出して磨いていくことで、周囲とは差別化された存在になります。これはスペシャリストとしての道です。

組織の前工程・後工程

一方で、組織はさまざまな人たちと関係しています。そのため、自分の仕事の前工程・後工程に配慮して仕事ができる人が重宝されます。それは組織全体の仕事の質とスピードを高め、会社への貢献度を高めることにもつながります。

AIの活用

若い世代は心配ないと思いますが、今後はAIをいかに活用できるかが鍵になります。AIが活用しやすいデータベースの作り方や、プロンプトの指示の出し方をきちんと学んでおくとよいと思います。

人として信頼されること

人は一人では生きていけず、さまざまな人との関わりによって社会が成り立っています。特に会社は、組織で動くからこそ、一人よりも大きな仕事ができ、大きなお金を動かすことができます。どんなに仕事が早く、その質が高くても、コミュニケーションの質が欠けていると、組織として機能しなくなります。そうなると、上司も仲間も自分を引き上げてくれなくなり、結果として自分の成長を妨げる要因になります。

座右の銘や、大切にされている言葉があれば教えてください。

人間万事塞翁が馬

有名な言葉ですが、良いことがあっても、その先に落とし穴があるかもしれません。反対に悪いことがあっても、災い転じて福となることもあれば、その悪い経験が先々の成功を導くことになるかもしれません。

この心持ちで臨めば、有頂天になることも落ち込むこともなく、安定した気持ちでいられます。

Make a difference

日本では「違う」という言葉はネガティブに捉えられがちですが、“Difference”はポジティブな言葉です。その違いを自ら創り出していくことが他との差別化となり、自分自身のアイデンティティになっていきます。

株式会社ティムコが創業された経緯と、創業時に込められた想いについて教えてください。

ティムコは、私の父である酒井貞彦が1969年に創業した会社です。創業前の酒井貞彦は、電機製品メーカーで貿易を担当していました。

昭和30年代から40年代は、日本では週休1日で、あまり娯楽もなく働き続けていた時代です。
酒井貞彦が仕事で米国を訪れた際、当時すでに週休2日で、家にはさまざまな家電製品が揃い、自家用車があり、家族や仲間と週末を楽しんでいる様子を見て、日本も経済発展とともに、こうして余暇を楽しむ時代がくるだろうと感じたといいます。そして独立して設立した会社がティムコです。趣味をテーマとして、余暇時間を豊かにするための会社です。

設立当初は、フリスビーやサーフィンなどさまざまな遊び道具を取り扱っていましたが、米国の雑誌でルアーフィッシングやフライフィッシングという釣りがあることを知りました。日本では釣りを趣味とする人が多く、アメリカに対する憧れも強い時代でしたので、これらの欧米の釣用品に的を絞って輸入することにしました。

フェンウィックやオービスといった米国の有名ブランドに問い合わせたところ、正規販売の権利を獲得でき、このことがその後のティムコの成長に大きく貢献しました。

株式会社ティムコイメージ2

「TIEMCO」という社名の由来と、ロゴマークのデザインについて教えてください。

TIEMCOは、“Tokyo Import Export & Manufacturing Company”の略称です。東京をスタートポイントとして、貿易・製造を問わずさまざまな手段によって、未来に向けたビジネスを実現できる企業でありたいという理念のもとに設立しました。

現在のロゴマークは、1981年から採用しています。フライフィッシングにはバンブーロッドという竹竿があり、その断面が六角形になっています。この六角形の中に、空と山と木と水面を描きました。ロゴカラーは、空や水をイメージさせる青色としています。

株式会社ティムコロゴ

「Think in the field」というステートメントに込められた想いを教えてください。

当社は、“Think in the field”をステートメントとしています。これは、私たちの想いがいつも自然のフィールドにあることを意味しています。このステートメントは、六角形のロゴデザインと同時に採用したものです。

私たちは、今あるものをさらに改良するための努力を惜しみません。世の中にないものは自分たちで創り出し、自分たちが楽しく、世に役立つと感じるものを提供していきます。したがって、私たちは、働くことと同じく、遊ぶことも大切にしています。

自然との出会いは一期一会で、二度と同じシーンには巡り合えません。そのような一生の思い出となる瞬間に、私たちの商品が関わる存在でありたいと願っています。

貴社が大切にされている「Do Small Things(小さいことからはじめよう)」という考え方について、具体的な取り組み事例とともに教えてください。

当社では、環境に対する取り組みについて、一過性の風潮に惑わされず、確実なことだけを着々と行っていきます。“Do small things”(小さいことからはじめよう)は、こうした当社の考え方を表すスローガンです。小さいことでも、着実に環境をよくする取り組みから始めることをテーマとしています。

3つの着実な取り組み

  • 無駄遣いしない:限られた資源を無駄に使わない。
  • できるだけ長く商品を使っていただく(ロングライフ):できる限り長く使っていただける設計、品質、修理対応。
  • 身の回りから美化していく:まずは自分の身の回りをきれいにすることが、環境良化の基本。

具体的な事例

ティムコの歴史は、釣りをはじめとした水に関わるアクティビティとともに歩んできました。当社では、売上の一部を業界団体や活動に拠出し、水中や水辺の環境改善を支援しています。

◎ 公益財団法人日本釣振興会
主に「放流事業」「水辺環境美化保全事業」「釣教育・釣振興事業」「釣りマナーと安全対策の啓発事業」などを行っています。

株式会社ティムコイメージ3

◎ LOVE BLUE事業(つり環境ビジョン)
一般社団法人日本釣用品工業会、公益財団法人日本釣振興会と共同で「LOVE BLUE」事業を実施し、水中清掃、放流、釣場育成などを行っています。

LOVEBLUEロゴ

◎ River of Dreams(R.O.D)
当社は、2022年より、自然と遊びが両立する「理想の川」を実現するためのプロジェクト「R.O.D(River of Dreams)」を開始しました。
日本各地で展開している河川・湖沼の環境活動や放流活動などと連携し、各活動へ参画・参加します。あわせて、そのような活動の情報交換のハブとして、また釣り人やカスタマーへ情報を広めるメディアとして、R.O.Dが働きかけていきます。

多くの人が「川遊び」を取り入れたライフスタイルを実践できる環境として、その受け皿となる「理想の川」が各地に実現されていくよう、イニシアチブをとって動いていく活動です。

◎ 日本赤十字社の国際活動と連携したアフリカ・ルワンダへの支援
日本赤十字社がルワンダ赤十字社と連携し、災害や貧困に苦しむ人々への支援を行う国際活動「ルワンダ気候変動等レジリエンス強化事業」に賛同し、アウトドア衣料Foxfire(フォックスファイヤー)を通じた支援を行っています。防虫素材を用いたスコーロン®製品における収益の一部をこの活動への寄付に充てているほか、現地職員・ボランティアの方々が安心・安全に支援活動を行えるよう、スコーロン®製品を提供しています。

株式会社ティムコイメージ5

◎ ロングライフ設計・リペア対応
商品をつくるには、素材や製造にかかるエネルギーだけでなく、開発に関わる時間とエネルギーも膨大なものとなります。また、商品の廃棄にも環境負荷が伴います。したがって当社では、一度つくった商品をできる限り長くお使いいただくことが、お客様にとっても環境にとっても負担が少ないと考えています。耐久性を重視し、リペアしやすい商品設計とリペア体制の充実により、お客様にできる限り長く商品をお使いいただける体制づくりに努めています。

また、商品のロングライフ化は、ライフサイクルアセスメントの観点からも環境負荷低減に重要な要素と考えます。

◎ 廃棄物の削減
製造した商品を廃棄するとごみが発生し、そのごみの処理にも環境負荷が発生します。また、廃棄対象となった商品の製造や輸送に要したエネルギーも無駄になるため、できる限り廃棄を減らすことが環境負荷の抑制につながります。
当社でも廃棄の削減に取り組んでおり、オリジナルアウトドア衣料「Foxfire」では、衣料品でありながら商品の「廃棄ゼロ」を目指しています。今後とも、さらなる環境負荷低減に努めてまいります。

貴社が掲げる「Quiet Sports」というコンセプトについて教えてください。

クワイエット・スポーツとは、自然を汚すことなく静かに楽しむアウトドア・アクティビティを意味します。山を切り開いたり薬剤を撒いたりするなど、環境に強いインパクトを与えるアクティビティは含みません。

フライフィッシングは代表的なクワイエット・スポーツですが、ほかにもカヌー、クロスカントリースキー、キャンピング、登山、バードウォッチングなどが含まれます。

特に当社はフライフィッシングの分野において強みを持っています。フライフィッシングを楽しむには、豊かな森があり、その森が綺麗な川をつくり、その川が海にまで流れ込み、そこに魚やさまざまな生物が介在して成り立つものです。そのため、自ずと環境だけでなく、天候や生態も知ることになります。

株式会社ティムコイメージ9

ティムコの詳しい事業内容や強み、オリジナルブランド「Foxfire」を立ち上げた経緯を教えてください。

当社の事業の柱は、フィッシング事業とアウトドア事業の2つです。

フィッシング事業

釣りにはさまざまなジャンルがありますが、当社のフィッシング事業では、フライフィッシングとルアーフィッシングを専門的に取り扱っています。当初は欧米の釣具の輸入からスタートしました。

当社が創業した1969年当時、日本ではこれらの釣りは知られておらず、当社はパイオニア的な存在として日本市場への啓蒙を続けてまいりました。
特にフライフィッシングは、軽い毛バリを飛ばすためのフライキャスティングをマスターする必要があるため、当社では1976年よりフライフィッシングスクールを開講しました。スクールからは延べ2万人以上が巣立っており、こうした活動により、現在はフライフィッシングにおいて強みを持つに至りました。

現在はオリジナル商品の比率の方が高く、欧米でも標準的に取り扱われている商品が多くあります。

株式会社ティムコイメージ4

アウトドア事業

アウトドア事業では、オリジナルアウトドア衣料「Foxfire」を取り扱っています。Foxfireも、当社が強みを持つフライフィッシングがルーツとなっており、1982年に4モデルのフライフィッシングベストからスタートしました。それまでは輸入品が中心で、Foxfireが当社初のオリジナル商品です。

米国のフィッシングベストのサイズや使い勝手が日本での使用に適していなかったこともあり、自分たちの理想とするものづくりを目指しました。また、欧米の会社は事業売却が多く、代理店の権利の消滅などへの危機感もあり、経営安定化のためにオリジナル商品も求められていた背景もあります。

その後、アイテムを拡大し、現在では総合アウトドア衣料ブランドとなっています。誕生から40年以上が経ちますが、当社の売上の約7割をFoxfireが占めています。

Foxfireロゴ

株式会社ティムコイメージ10

フィッシング・アウトドア業界を取り巻く市場環境は、近年どのように変化しているとお考えですか。

2020年から2023年ごろまでは、新型コロナウイルスの感染拡大で活動の自粛が続くなか、国内では、密を避けられるアクティビティとして釣りがブームとなりました。その反動で、現在は調整期に入っています。一方、アウトドア事業は、その期間は停滞していましたが、現在は回復期に入っています。

日本の釣用品は、JDM(Japan Domestic Market)のひとつとして欧米で注目されており、今後は海外に向けて展開するメーカーが増えていくと思います。これはアウトドア衣料も同様で、特にインバウンドの需要が強い傾向にあります。

アウトドアの楽しみ方や消費者の価値観が多様化する中で、今後アウトドア・アクティビティにはどのようなニーズが高まるとお考えですか。

人間は甘いものばかり食べていると塩気のあるものが欲しくなるように、デジタル化が進むと同時に、自然の中で楽しむバランスを求めるようになります。どんなにデジタル化が進んでも、アウトドア・アクティビティはなくならず、むしろ必要とされるものになっていくだろうと考えています。

初心者や若い世代に釣りやアウトドアの魅力を伝え、継続的に楽しんでもらうためには、どのような取り組みが必要だとお考えですか。

教える人や、一緒に取り組む仲間が不可欠です。特に釣りは、何を選んでよいのか、どこに行けばよいのかなど、わからないことが多く、それが参入障壁となります。また、始めた後も、連れて行ってくれるメンターがいないと続かないケースが多いです。

登山などはもっと気軽ですが、釣りも登山も、知らないと命に関わることがあります。そのため、教える人、共に取り組む仲間が必要であると考えます。

フライフィッシングスクールなど、釣りの普及に向けた活動を長年続けてこられた中で、今後さらに力を入れていきたい取り組みはありますか。

フライフィッシングは、欧米を中心に発展し、それが日本に伝わって普及しました。今後は、まだフライフィッシングが普及していない国々の方々に向けて、啓蒙活動を行っていきたいと思います。

これからの貴社を担う人材に期待することを教えてください。

余暇時間や趣味をテーマとする事業ですので、自分自身の趣味を極めて深掘りできる方だとより良いと思います。それにより、今必要なものや困っていること、不便なことなどをどのようにしたら解決できるのかが分かり、商品開発においても、社内のソリューションにおいても貢献できます。

今後の目標やビジョンについて教えてください。

当社は、人々の人生にコミットする事業を行っています。当社が関わるアウトドア・アクティビティに親しむ方々には、それをライフワークとしているケースが多くあります。そこで出会った出来事が、一生忘れられない感動になるかもしれません。当社は、そこにコミットしたいと思っています。

現在は、次の3つをテーマに取り組んでいます。

  • お客様との接点の強化:当社はBtoC(Business to Consumer)型の事業を行っているため、永遠のテーマとなるものです。
  • 海外展開の拡大:これまでフライフィッシング用品を中心に海外展開してまいりましたが、今後はさらにアイテムを拡大して、より多くの方々に提供していきたいと考えています。
  • EC分野の拡大:ECは、時や場所を越えて人と人、人とモノを結びつける存在です。

これら3つは一体のもので、当社が関わる人々の人生を豊かにしたいと願っています。

この記事をお読みの方にメッセージをお願いします。

当社は「余暇」を通じて人々の人生を豊かにするための会社です。それを、クワイエット・スポーツによって実現していきます。今後、世界に向けて、より多くの方々の人生を豊かにしていきたいと考えています。

これまで支えてくださった皆様に深く感謝いたしますとともに、どうぞこれからも、変わらぬご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

株式会社ティムコロゴ小

企業概要

企業名 : 株式会社ティムコ

代表者 : 酒井 誠一

所在地 : 東京都墨田区菊川三丁目1番11号

設立  : 1969年12月1日

従業員数: 71名(2025年11月30日現在)

事業内容: フィッシング ・アウトドア関連用品の企画開発、輸出入、製造及び販売

URL  : https://www.tiemco.co.jp/

 

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