【ワイズティーネットワーク株式会社】
根本 泰昌社長インタビュー
栃木県宇都宮市出身。大塚製薬株式会社を退職後、「紅茶で人と地域を元気にする」を理念に、2006年5月にワイズティーネットワーク株式会社を設立。同年、宇都宮市のオリオン通りに「世界のお茶の専門店Y’s tea」をオープンする。代表取締役社長兼ティーブレンダーとして、オリジナル紅茶やハーブティーの開発、地域資源を活用した「ご当地紅茶」のプロデュース、企業・自治体向けの紅茶監修などを手掛ける。2010年には国認定組織「おもてなし紅茶文化普及委員会」を組成し会長に就任。現在は、講演活動や教育・地域振興事業にも注力し、紅茶を通じた人と地域の活性化に取り組んでいる。
きっかけは、サラリーマン時代に感じた「2つのこと」でした。
これから出勤するであろう人のほとんどが、土日にリフレッシュしているはずなのに、なぜか表情は疲れていました。
一方、旅行で訪れたロンドンやニューヨークで感じたのは違う空気でした。
月曜日の朝、これから始まる1週間に対して前向きで、中にはとてもエネルギッシュに見える人もいました。逆に金曜日の夜は、彼らはやり遂げたという心地よい疲労感を漂わせながら帰宅していきます。
では、日本人の金曜の夜はというと、ご想像どおり、週の中で最も元気な表情をしています。この差はいったい何なのだろうかと、漠然と考えるようになりました。
そして、その月曜日の地下鉄には、登校する児童や学生も乗り合わせています。
そんな疲れた表情の大人たちを見て、若者はどう感じるだろうか。よく「最近の若者は働くことへの意欲がない」と言われますが、もしかしたら、働く私たちのそうした表情による影響が大きいのではないかと痛感しました。
(実際に起業後、小学校から大学まで講演を行い、学生たちに同じ質問をしたところ、電車内で見る大人たちの様子や、家庭での父親の愚痴などから受ける影響がとても大きいという答えが返ってきました。)
そのときふと思いました。「日本の医療は世界的に見ても素晴らしい。それなのに、これだけ疲れている人がいる。薬や病院では治せない人が増えているのではないだろうか」と。
サラリーマン時代、実家のある宇都宮に帰省するたびに目にしていた、大好きな中心市街地の風景があります。大好きだったあの店はなくなり、人も年々少なくなっていきました。
少年時代の僕にとって、宇都宮の中心市街地は「ハレの場」でした。
バスで20分ほどかかる場所であるにもかかわらず、わざわざよそ行きの服に着替えてまで出かけたものです。そんな大切な思い出を持つ僕は、「宇都宮の街を元気にしたい」と思うようになりました。
それは、政治や補助金をもってしても再生が難しいと言われる、最難関の課題です。
ある日、帰省時のルーティーンとなっていた商店街散策をしていたときのことです。天から突然、天使か悪魔かのささやきが聞こえた気がしました。「それなら、あなた自身が街を変えなさい」と。
不思議なことに、この国の閉塞感につながる2つの大きな問題、つまり「人」と「地域(特に地方都市の中心市街地)」が抱える病を、同時期に見つけてしまったのです。これには何か意味があるのだろうか。あのささやきが、頭から離れませんでした。
それ以降、この2つの問題が気になって仕方がなくなりました。もともと正義感は強いほうですが、それにしても次元が違います。政治も経済も地域活性化も、学校で学んだことはありません。宇都宮を離れて10年以上が経ち、地元の現状をそこまで理解できてもいませんでした。
そこでまず、「人と地域を同時に元気にできるものは存在するのだろうか」「そして、もし奇跡的にそれを見つけられたとき、どうやって実現できるのか」と考えてみることにしました。
その最適解の候補を思うままに書き出し、後述の方法でそれを見出したうえで、起業を決意しました。
候補として、
を、思いつくまま単語でびっしりと書き出していきました。気づけば5000個ほどになっていました。その中でナンバーワンのものを用いて起業しようと考えました。
候補は十分に揃ったので、次に20の関門を設けました。
① 持続可能 ② 老若男女誰もが楽しめる ③ 地域が元気になる ④ 笑顔になる ⑤ 栃木がかっこよくなる ⑥ 自慢になる ⑦ コミュニティの創生 ⑧ 気づかぬうちに健康に ⑨ 副作用がない ⑩ 世界にも通じる ⑪ 気持ちが安らぐ ⑫ 郷土愛が生まれる ⑬ オンオフの切り替え ⑭ 平凡な日常のアクセント ⑮ 手軽である ⑯ 金銭的負担が少ない ⑰ 生涯続く趣味としても ⑱ 物語がある ⑲ 愛着が生まれる ⑳ 自分が大好きなもの
前職でマーケティングを担当していた人間でありながら、あえて「儲け」「地域性」「将来性」といった関門は設けませんでした。それくらい純粋な気持ちで起業しようと考えていたのです。
5000個のキーワードについて、20の関門それぞれに当てはまるものには○を、そうでないものには×をつけていきました。すると、唯一20個すべてに○がついたものが存在したのです。
3800番目くらいに書いていた「紅茶」という2文字でした。
一瞬、頭の中が真っ白になりました。「紅茶」が自分の中での理想のアイテムに選ばれるとは――。5000個のキーワードの終盤近くに書いていた、まったく想像していなかった答えでした。
さらに、「紅茶」自体についてのビジネスの難しさもありました。
もちろん先述のとおり、「儲け」を考えずに選ばれた尊いアイテムではあるのですが、前職で飲料にも関わっていた人間としては、紅茶は非常に売りにくいアイテムというイメージが強くありました。特に紅茶には「貴族的」「敷居が高い」「飲むシーンが限定される」といったイメージが日本では根強く、大衆飲料であるコーヒーに比べ、マーケットもかなり小さいものでした。
さらに地元・栃木県に目を向けると、紅茶のイメージがまったく湧きません。
それは市場にも表れていて、実際、大手紅茶会社やお茶メーカーが宇都宮では大苦戦して撤退しているそうです。市役所に紅茶の消費データについて聞いてみても、消費量は上位にまったく顔を出していないとのことでした。
どれだけ純粋な気持ちでダントツ一番、20点満点のアイテムと出会えたとしても、これはあまりに厳しい現実でした。
(これは起業してすぐに通った紅茶のスクールで知ったことですが、栃木県は紅茶が「売れない」条件を満たしている特区のような場所だそうです。売れる地域の例としては、港(海)がある、西洋文化の影響を受けている、大都市である、おしゃれなイメージがある、などが挙げられます。それを聞いて、さらにダメージを受けた記憶があります。)
しかし、5000分の1の確率で、自分の理想をすべて満たしたこの「紅茶」を信じてみようと思いました。
2位以降のキーワードを中途半端に覚えていると、ついそちらが気になってしまったり、後悔につながってしまう可能性があります。そこで、それらの記憶を消し去るべく、すぐにその模造紙を処分しました。
そう。この瞬間、僕は「紅茶」以外の選択肢を捨てて、起業を決意したのです。

僕の好きな言葉は「とことんやる」です。そこまでやり切ってから判断する、という意味です。
礼儀正しさ、感謝の気持ち、いただいたご縁を大切にすることを、創業前から意識していました。
まさに「紅茶を飲む」ことです。5000個の選択肢から選ばれただけあって、美味しいだけでなく、リラックスもでき、さらに集中力も高まるという、理想的なアイテムです。
あとは「まちあるき」です。自身の地域活性化のヒントになりますし、フレッシュな感覚を得ることができます。
「とことんやる」
「キセキは起きる! 起こそうとすれば!」
「Y’s tea」の「Y」には、「あなた(You)」と、僕の名前「Yasumasa」の頭文字という、2つの意味を込めています。「あなたと私をつなぐお茶」という想いです。
また「Y’s」は「ワイズ」と読み、紅茶が知性の飲み物であることから「Wise(賢い)」の意味を、そして紅茶で世界中に笑顔を広げたいという想いから「Wide(広げる)」の意味も込めています。
「紅茶で人と地域を元気に!」
① ご当地紅茶を通じた地域活性化(経済産業省「おもてなし経営企業選」選出)
② 「五感」を刺激する「ティーセラピー」を通じた新たな福祉のかたち
③ 全国初、小学校への紅茶部創部(文部科学大臣賞受賞)
① 世界で1つだけのオリジナル紅茶
② オーナー自らハンドブレンドした紅茶
③ 「Tea story®」――ストーリーのある紅茶づくりで、飲食店のみならず、さまざまな業種に紅茶を提供
※2026年には、日本初となる建設会社のオリジナル紅茶、「シティーハンター」40周年記念紅茶、今秋公開予定の映画の“主題茶”、全国中央会オリジナル紅茶、栃木トヨタ70周年記念紅茶(初代クラウンモチーフ)など、多数のコラボレーションを予定しています。

① 価格に左右されない、オリジナルブレンド紅茶ならではの独自性
② 非飲食系の企業や団体、さらには自治体からの依頼が多いこと
③ 営業活動を行わず、広告宣伝費0円を貫き、価値を理解してくださったお客様にのみ提供していること
厳しい状況にあるときほど、あえて仕掛けをつくる傾向があります。
今回も、もともと厳しい条件を受け入れたうえで紅茶を信じて起業しましたので、それをハンディキャップとは思わないよう心がけました。さらに発想を転換し、「束縛年表」をつくりました。
だからこそ、初年度は外出もせず、自ら毎日店頭に立ち続け、弊社の理念と紅茶へのこだわりを伝え続けました。
<束縛年表>
一、一か月間はオリオン通りのために尽くす
一、一年間は宇都宮市のために尽くす
一、三年間は栃木県のために尽くす
一、五年間は100km圏内の人々のために尽くす
一、七年間は国内の仕事のみに専念する
一、十年間は県外に店舗展開をせず、栃木のみに拠点を置く
いつ、どこで、誰が、どんな気持ちになったらよいかを想像しながら組み立てるようにしています。
また、「何味にしてほしい」という依頼ばかりではないので、クライアント様の想いや理念を紅茶に落とし込み、それをご本人が実感できるような着地を心がけております。
これは、世界を旅した際に「ブレンドの仕方は誰も教えてくれなかった」ことがきっかけです。「だったら自分で編み出して確立してみよう」と考えました。
商品第一号の「ベリー!ベリー!ベリー!」は、300回以上の試作を経て生まれた紅茶です。
技術面では、0.1g単位までこだわったレシピと、直感による配合の調整です。もちろん、季節や紅茶の出来も考慮してブレンドするようにしています。

Y’s teaが日本一の紅茶の会社になることよりも、冗談抜きで、宇都宮市が紅茶の消費量日本一になることのほうが難しいと思っていましたので、正直なところ考えてもみませんでした。
経済産業省の職員の方から、お電話でその報告があったとき、嬉しさや驚きとはまた違う、「とんでもないことが起きてしまった」という感覚が大きかったことを覚えています。
これは、「紅茶不毛の地」と言われていた宇都宮の人々の間で、弊社の理念、そして「飲みなれない紅茶」としてではなく「Y’s teaという飲み物」としての理解(ファンになってくださること)が高まっていった結果だと思っております。
住んでいる方々の想いと、地域への愛です。決して、特産品を活用することではないのです。
一番印象に残っているのは、北海道砂川市のご当地紅茶「すながらスイートティータイム」です。
北海道の小さな市の、市役所職員さんの熱意から市民を巻き込むプロジェクトへと発展し、トークショーと発表会を同時開催して、大勢の市民が集まり完成を祝ってくださったシーンは、今でも忘れられません。
一番反響が大きかったのは、「正倉院展」の紅茶缶です。
宝物の螺鈿鏡がモチーフになっています。これは僕自身も欲しくて、会場に2回足を運んで購入してきました。
僕は、五感には隠れたスイッチがあると考えています。紅茶と聞くと、嗅覚だけがセラピーの主役だと思われるかもしれませんが、実は違います。高齢者施設での例をご紹介します。
紅茶にブレンドされているハーブ(レモングラス)に触れた際、その独特の触感からレモングラスを思い出し、当時ご自宅の庭で栽培していた記憶がよみがえった方がいらっしゃいました。
紅茶の説明中、原産国である「スリランカ」という言葉を述べた瞬間、普段は会話が難しい入所者の方が「私、〇〇商社でスリランカを担当していた〇〇です!」と、商社マン時代のご自身を思い出されました。
(実際、院長からは「詳しい説明は分からないと思うので簡単で結構です」と言われましたが、「いいえ、ぜひこの紅茶のストーリーをすべてお話しさせてください」とお願いした結果、こうした奇跡が生まれました。)
桜の花びらが入った紅茶をお淹れした際、文字を書くことができなかった方が「ノートとペンを貸して!」と俳句をしたためられたこともありました。
その後「私、国語の先生だったのよ!」とおっしゃり、介護スタッフもその方の過去をまったく知らなかったため、一同にとって嬉しいサプライズとなりました。
このように、楽しい奇跡がたくさん起きたティーパーティーでした。つまり、紅茶は生かし方次第で、「単なる飲み物」から「五感を刺激して奇跡を起こす魔法のアイテム」へと昇華できるのです。
① 紅茶の調達からブレンド、包装、商品化まで、すべて自社で一貫して製造でき、責任を一本化できること
② 相見積もりなどの駆け引きやストレスとは無縁であること
③ 紅茶に興味のあるお客様からの依頼がほとんどのため、商談がとてもスムーズであること
④ 業種を問わずお付き合いができること(さまざまな業種の方から紅茶のご依頼をいただいています)
⑤ 想像を超えた味わいとストーリーのあるオリジナル紅茶により、お客様に「紅茶+α」のメリットを提供できること
Y’s teaでは、常時数十種類の紅茶やハーブティーをご用意しています。「選ぶ楽しさ」を感じていただきたいからです。
とはいえ、種類が多いと、お客様は何を選べばよいか迷ってしまうこともあります。
そこで当店では、「紅茶のテスター」で香りを直接お確かめいただき、「商品説明POP」で紅茶のストーリーを感じていただけるようにしています。
また、スタッフが常時、お客様にぴったりな紅茶を一緒にお選びするサービスも行っておりますので、初めての方でもまったく問題なく紅茶をお選びいただけると思います。
紅茶は決して難しいものではありません。ご自身が「いい香りだな」「美味しいな」と感じるものを見つけていただき、ファッションと同じように、その日、その時に合う紅茶を選んで飲んでいただけると素敵だと思います。

① VS(敵対すること)は使わず、常に「And」と「With」の考えを持つこと
② Y’s tea流「なごみ」の経営――競わず、攻めず、ゆったりと
③ Y’s tea流「無敵経営」
☆100戦100勝だけが無敵ではありません
・100勝して、相手にとっても100勝(WIN-WIN)と思える結果になること
・100戦100引き分け(協働)
柱を1本にしないようにして、常時3本以上の事業を備えるようにしました。
(物販、飲食、教室、紅茶監修、通販、講演)

全国各地へのご当地紅茶の普及、紅茶ツーリズムによる全国各地の地域活性化。
あらゆる業種に紅茶を用いた楽しいコラボレーションを――。
5000分の1から選ばれた「紅茶」は、決して世紀の大発見でもなければ、ビジネス上魅力のあるものでも、まったくありませんでした。
つまり、自分の理念と想いに照らし合わせて、とことん追求して選んだという要素こそが重要だったのだと思います。
現に、ジャーナリストの方にも「根本社長は、紅茶じゃなくても今と同じ活動をしていますよね」「ハンディのある紅茶でここまでできたということは、他の商材だったらもっと簡単に成功できましたね」と、よく言われます。
また、僕は地域活性化の専門家(大学も文学部でした)でも、紅茶のエキスパート(前職を退職してから紅茶の資格を取得しました)でもありませんでした。つまり、これも「根本だからできた」というわけではまったくなかったのです。
皆さんも、自分の可能性と想いを信じてみてください。
自分がちょっと得意だと思っていること、実はやってみたいと思っていることが、世界をハッピーにする種かもしれません。そう考えて、人生の一部にそれを実践する時間を割いてみると、案外楽しいかもしれません。

企業名 : ワイズティーネットワーク株式会社
代表者 : 根本 泰昌
所在地 : 栃木県宇都宮市曲師町5-3 タキヤビル2F
設立 : 2006年 (平成18年) 5月8日
従業員数: 7名
事業内容: オリジナル紅茶のプロデュース業、地域活性アドバイザー、講演活動 (紅茶、ストレス対策、食育、地域活性、ビジネス、農商工連携、キャリア教育等)
URL : https://www.y-tea.com/