【ファーイースト・ホスピタリティ】
マーク・ローナー社長インタビュー
私はスイスで育ったのですが、家族とよくアジアに旅行していまして、家族は今もアジア圏に住んでいるんです。そういった経験の中で、アジアのホテルはヨーロッパと比べて運営方法が違うことに興味を持ち、大学ではホテルマネジメントを学びました。卒業後はハイアット・ホテルズ&リゾーツでキャリアをスタートしたわけですが、次第に分析のほうが向いているんじゃないかと気づきました。それで今度はレベニューマネジメントを学びまして、今もそれは活きています。
その後はファイナンス関連を大学院で学び、シャングリ・ラ・アジアやフレイザーズ・ホスピタリティ・トラストなどでアセットマネジメントを務めました。「ファーイースト・ホスピタリティ」に移ったのは、ホテルのオペレーションだけではなく、ビジネスの核に不動産があるところが面白いと思ったからです。

© 阿部章仁
シンガポールを代表するホテル運営会社の1つで、ミッドスケールの「Village Hotel(ビレッジ・ホテル)」からアップスケールの「Oasia(オアジア)」、さらにラグジュアリーホテルまで、幅広いセグメントで質の高いホスピタリティを提供しています。
日本では「Village Hotel」が東京の浅草と有明、横浜、そして大阪は本町と難波にあり、コンセプトは「Live Like A Local(ローカルのように過ごす)」。チェックインするときに「ビレッジパスポート」という小冊子をお渡ししていて、地元のグルメや隠れた名所、日本文化のマナーまでキュレーションして紹介しています。たとえば浅草なら地元のお寿司屋さんや100年続いている天ぷら屋さんなど、近隣の文化でハイライトできるようなところを取り上げています。地域文化の中の1つに「Village Hotel」があるというような、お客様の宿泊体験そのものを提供するイメージです。

© 阿部章仁
1つは本質的で質の高いサービスです。スタッフは独自のトレーニングプログラムを受けており、お客様の特性を見極めることで最適なサービスを提供しています。海外からのお客様には、そのエリアの文化にご興味があるだろうということでそのように対応しますし、また日本人の出張のお客様でしたら、お部屋で快適に過ごしたいというニーズがあると思いますので、そういった対応に変えるということです。
そしてもう1つは、テクノロジーとサステナビリティの導入に取り組んでいる点です。現在、予約段階のコミュニケーションから、チェックイン/アウト時の手続き、滞在中の各種リクエストなど、スマートフォン上ですべてを完結できるサービスの導入を検討しています。部屋にタオルを持ってきてもらうとか、レイトチェックアウトを頼むなど、デジタルコンシェルジェとして細かなサービスまでフォローしていきたいですね。質の良いカスタマーサービスを保ちつつ生産性の改善にもなるということは、ホスピタリティの良さにも繋がりますから、この方向性はさらに進めていきたいと思っています。

ファーイーストビレッジホテル東京有明
私たちは何年もかけてスタッフ教育のフレームワークを作り上げてきました。企業文化として「一人ひとりが主体性を持って成果を創出できる環境づくり」を大切にしていますが、スタッフへのトレーニングでもそれは変わりません。短期ではなく、長期的に一緒にキャリアを作っていくパートナーは、不動産オーナーや投資家、そしてスタッフも同じだということです。互いに尊重し合う考え方は、最終的にスタッフを通してお客様とそのサービスにも伝わっていくものだと思います。スタッフには「Acts of Grace」と書かれた小冊子を渡しているのですが、「Grace」は「優雅さ」や「思いやり」、「敬意」という意味ですね。お客様にその気持ちを持って接することは、あらゆるサービスを提供する際に有効だと考えています。
一方、能力開発というのも非常に重要で、レベニューマネジメントやAIを使ったビジネスインテリジェンス、さらにプロセス改善と最適化にも目配りが必要です。精神的な側面と能力開発、スタッフ教育はその両輪で完成するものですし、それが一体化している状態で、初めてオーナー様に提案する際に受け入れられると思っています。
レベニューマネジメントという考え方は航空会社から広がってホテル業界にも入ってきたもので、「その時に」「その日のもの」が売れなければ無駄になってしまう、だから需給管理が重要ということですね。以前からある考え方ですが、近年はさらに進化していて、レベニューマネジメントがいっそう大切になっていると思います。
2024年と2025年を振り返ると、販売可能客室の1室あたりの収益が一番伸びたのが、実はこの「Village Hotel」のようなミッドスケール、中価格帯のホテルなので、今後も大きく伸びるチャンスがあると見ています。マリオットやインターコンチネンタルのようなグローバルホテルチェーンもミッドスケールの展開をしていないわけではないですが、やはり彼らが注力しているのはアップスケール、高価格帯です。そういった意味でも、現在は私たちのようなプレイヤーにチャンスがあると見ています。
もちろんミッドスケールだけを狙っていくのではなく、私たちには「Oasia」「Quincy」といったアップスケールや、さらにエントリー・ラグジュアリーのホテルブランドもありますので、こちらも含めてチャンスをうかがっているところです。具体的に言うと、FEH全体では、2030年までに客室総数を10,000室に拡大することを目標としています。

© 阿部章仁
東京と大阪をさらに増やすことと、そして京都ですね。その3都市で案件が進んでいます。名古屋と福岡、金沢など、国内のお客様の割合が多いエリアも重要ですし、もちろん札幌と沖縄でも計画を進めたいと考えています。日本でも「Village Hotel」以外のブランドを活用していきたいですし、客室数を今より1,500室拡大して、トータルで2,500室になることを目指しています。
「ファーイースト・ホスピタリティ」はシンガポールの会社というイメージが強いと思うのですが、タイやベトナム、インドネシアではすでにブランド認知をされています。現在はベトナムでも投資を行っていて、住宅などの開発でも知られているので、そこを入り口にして「ファーイースト・ホスピタリティ」ブランドのホテルの認知度が高まっています。今後は日本でもホテル運営と不動産管理の両方をバランスをよく行い、アジア地域全体のホスピタリティブランドとして、規模を拡大しつつ成長していきたいと思っています。
ライター名:藤野 さくら

企業名 : Far East Hospitality Holdings Pte. Ltd.(ファーイースト・ホスピタリティ)
代表者 : Mark Rohner(マーク・ローナー)
所在地 : 6 Eu Tong Sen Street, #04-28 The Central, Singapore 059817
設立 : 2013年
事業内容
・ホテルの運営・管理
・サービスアパートメントの運営
・ホスピタリティ事業の開発
・ホテル投資およびアセットマネジメント