【酒生哲雄写真事務所】
酒生 哲雄代表インタビュー
2000年、まだパソコンが珍しい頃、学生時代、共に夢を見ていた友人のバンドから、自主制作のCDジャケットの撮影・制作をお願いされたことが、この仕事を志すきっかけでした。
当時は写真を撮ることも楽しかったのですが、それ以上に心を動かされたのは、一つの作品をみんなで創り上げていく時間でした。
各メンバーとイメージを語り合い、試行錯誤を重ねながら、撮影・デザイン、一枚の写真がCDジャケットとして完成していく。この創作に大きな魅力を感じ、その翌日には写真の道を志しました。
新しい機材や、新しいカメラ、まだ知らない写真にまつわるものを、探す・調べる・見る・聞く・感じる・取り入れる・挑戦することです。

私が大切にしている言葉は、「感謝を込めて…」です。
この言葉は、心から尊敬する村上三絃道の二代目村上由哲さんが、生前大切に使われていた言葉で、その考え方に深く共感し、私自身も大切に使わせていただいています。
「感謝を込めて」という言葉には、ただ相手に感謝の気持ちを伝えるだけではなく、関わってくださるすべての方への敬意や、その時間、その出会い、その瞬間を大切にするという意味が込められていると感じています。
撮影の仕事も、一人の力だけで完成するものではありません。多くの方の出会いやご協力、お力添えがあって、一つの表現が生まれます。だからこそ、一つひとつの仕事に感謝の気持ちを持って向き合うことを大切にしています。
写真を通して出会えた人や経験への感謝を忘れず、その想いを次の作品や仕事へつなげていく。「感謝を込めて…」という言葉に気付かせていただき、私にとって仕事・撮影・人生への姿勢そのものを表す大切な言葉です。
酒生哲雄写真事務所は、タイプの異なる二人のフォトグラファーが在籍していることを強みとしています。
案件ごとに求められる表現はさまざまだからこそ、それぞれの得意分野や視点を生かしながら、撮影内容に応じてメインフォトグラファーを担当したり、メインとアシスタントという形で役割を柔軟に変えたりしています。
一人では気づけない視点やアイデアを共有しながら撮影を進められることも、私たちならではの価値だと考えています。
撮影だけでなく、レタッチや映像制作まで一貫して品質にこだわり、案件ごとに最適なチーム体制で、クオリティの高いビジュアルを提供できるよう努めています。
「誰が撮るか」だけではなく、「どうすればその案件にとって一番良い表現になるか」を常に考えながら、柔軟で質の高いクリエイティブをご提案しています。

私は東京で生まれ、宮崎で育ったことから、どちらも自分にとって大切な故郷です。そのため、自然と二拠点で活動するスタイルになりました。
東京では、常に新しい表現やトレンド、クリエイティブな刺激に触れることができ、その感覚を作品づくりに取り入れています。一方で、宮崎には豊かな自然や穏やかな時間の流れ、人の温かさがあり、写真に本質的な美しさや余白を与えてくれます。
この二つの環境を行き来することで、都会的な感性と自然が持つ普遍的な魅力を融合させ、時代性がありながらも長く愛される広告写真や作品づくりを目指しています。
まだまだ活躍と呼べるほどではありません。私の中では、広告写真とアート作品に明確な境界はないのですが、常に写真と自分の可能性を追求しているとは思います。
写真の技術や表現方法は、時代とともに変化し、日々進化していきます。
その変化に向き合い、自分自身のスキルをアップデートし続け、振り返ってみると自ずと自分の身についている、そこも写真の大きな魅力の一つだと感じています。
広告写真では、培った技術や経験を、スポンサーやクライアントが伝えたい想いやブランドの価値を最大限に引き出すために活かしています。自分の表現だけではなく、相手の目的や期待を理解し、それを超えるビジュアルとして届けることを大切にしています。
一方で、アート作品では、積み重ねてきた技術を自分自身の感性や内面をできる限り表現するために使います。制約にとらわれず、自分が感じたことや伝えたい世界観を追求することで、写真表現の新たな可能性を探っています。
人のために磨く技術と、自分自身を表現するための技術。その両方を行き来することで、たくさんの相乗効果を活かし、写真に携わる者として、広告写真、アート作品と、共に成長し続けられるよう努めております。

私にとって写真とは、人と繋いでくれるもの。
一人の表現だけで完成するものではなく、クライアントさんやディレクターさん、スタイリストさん、ヘアメイクさん、モデルさんなど、多くの方々との出会い、そこから生まれる対話や信頼関係、写真をやっていなければ経験できないことばかりだと感じます。
だからこそ、まず大切にしているのは「どんな想いを伝えたい写真なのか」を丁寧に共有すること。その想いを写真の中へと昇華させるために、それぞれの専門性を尊重しながら、チーム全員で作品を創り上げていくことを何より大切にしています。
私自身のある経験から生まれました。そして今でも、アーティスト写真を撮影する上で最も大切にしていることです。私はアーティスト写真を、その人の人生を左右するほど大切な一枚だと考えています。
まだ若い頃、友人とお酒を飲んでいたときのことです。彼がふと、「いつか市長になるから、その時はぜひ写真を撮ってほしい」と言いました。私は軽い気持ちで、「もちろん!任せて!かっこよく撮ろう!」と答えました。
それから時が流れ、彼は本当に人生を懸けて市長選挙に立候補しました。そして約束通り、選挙用の写真撮影を私に依頼してくれたのです。
衣装が決まり、ヘアメイクも整い、ライティングも準備万端。いよいよ撮影が始まりました。しかし、ファインダーを覗いた私は戸惑いました。どの角度から撮っても、どんな表情を引き出そうとしても、彼の本来の魅力が写らない。彼らしさも、強さも、未来を託したくなるような存在感も写らないのです。
周囲には気づかれないよう平静を装いながらも、心の中では「どうしよう」という思いでいっぱいでした。「市長になる彼の最高の一枚を撮らなければならない。」そのプレッシャーの中で、私はあることを思いつきました。
彼にこう伝えたのです。「市長になるじゃない。」「もう、あなたは市長なんだ。」「今日撮っているのは、市長になったあなたの写真なんだ!」
彼はとても柔軟な人。その言葉を自然に受け止めた瞬間、目の前にいる彼の表情や立ち姿、まとう空気が一変し、彼の決意が前面に現れました。そして私は、心から「これだ!」と思える最高の一枚を撮ることができました。
「なりたい」と思いながら現在を撮る写真と、「すでになっている」という意識で撮る未来像の写真は、まったく違うということです。未来を目指している姿ではなく、未来を実現した姿を撮る。その違いが、写真に宿る力を大きく変えるのだと彼に教わり、実感しました。
その後、彼は皆さんのご想像の通り、市長になり、市のために精一杯がんばり、市長という役目を終え、今はまた彼にしかできない新たな挑戦を続けています。私は現在も、彼の人生の節目ごとに写真を撮らせていただいています。
この出来事以来、私は「未来像を撮影する」という考えを大切にしています。
「なりたい」「挑戦したい」という現在ではなく、「なった。」「なっている。」「すでに叶えている。」その未来の姿を、今この瞬間に写真として形にする。
それが、私の考えるアーティスト写真であり、多くの方の未来を写し出すために、今も変わらず大切にしている撮影スタイルです。
被写体が揺らぎ、重力がなくなり、時には宙に浮かび、時には空間が歪み、幾何学的で不思議な写真世界を、一回のシャッターで創ります。撮るのではなく、心で創る。唯一無二の瞬間写真で、偶然と必然が織りなす瞬間から生まれる私の撮影技法。
この撮影技法は、従来の方法では撮ることも、創ることもできません。今の時代だからこそ実現できる技法であり、この一発撮りの作品を撮影できるのは私だけだと思っています。
「JAPAN SHOT」は、その撮影技法を用いて、現代の日本各地を巡りながら作品を制作しているプロジェクトで、2022年から精力的に撮影を続けています。
2024年には、「アート × 宿 × 城下町」をテーマに、宮崎県日南市飫肥にある「PAAK HOTEL 犀(さい)」と「PAAK HOTEL 茜さす(旧伊東伝左衛門家)」の2会場で、初めて作品を披露しました。
2025年にはパリ・ロンドンで「JAPAN SHOT」個展。2026年には銀座にて「EURO SHOT」としてアップデートした個展を開催しました。そして2026年から2027年にかけては、「URESHINO SHOT」へとプロジェクトを展開していきます。
一回のシャッターだからこそ生まれる偶然と必然を大切にしながら、その土地、その瞬間、その時代にしか存在しない写真世界を創り続けるプロジェクトです。

私にとって、写真との出会いは人生そのものを大きく変えてくれました。仕事も、人との出会いも、作品づくりも、個展を開催できることも、そのすべてが写真から始まっています。
今は24時間、写真のことを考えられる環境にいられることを、本当に幸せだと感じています。そして何より、たくさんの皆様のお力添えがあったからこそ、写真を撮りながら生活できていることに心から感謝しています。
だからこそ、自分にしか撮れない一枚を追い求めることだけは、これからも譲れません。自分だからこそ生み出せる表現作品を追求し、日々精進を重ねながら、観ていただいた方に感動を届けられるような作品を創り続けていきたいと思っています。

企業名 : 酒生哲雄写真事務所
代表者 : 酒生 哲雄
所在地 : 宮崎県宮崎市阿波岐原町前浜4276番地534
東京都杉並区南荻窪4-27-2-401
設立 : 2007年
事業内容: 広告写真撮影・映像制作
URL : https://www.sakou-tetsuo.com/