【NPO法人エガリテ大手前】
古久保俊嗣代表インタビュー
一橋大商学部を卒業し、住友商事でM&A、事業再建を担当し、40歳過ぎで退職後、外資系企業の建て直しをハンズオンで執行してきました。市場開拓、事業変革、事業立上げに豊富な経験を持ち、株式上場・M&A・事業売却などのエグジット戦略にも高度なノウハウを持っています。直接経営した12社のうち11社を在任中に黒字化、2社を株式上場致しました。
現在は、NPO経営の傍ら、米国系教育サービス会社の代表としてシリコンバレー式コードブートキャンプを提供することで、日本のデジタル改革(DX)推進と若い世代のキャリアアップを支援しています。
社会人になったばかりの1985年に成立した「男女雇用機会均等法」は女性の勤労環境の改善にはつながらず、当時人事担当者だった私も問題意識が全く不足していました。その反省が頭を離れない中で、私自身の子どもの世代が就職を迎えようとした時期(2004年)にNPOを設立致しました。
私が中堅管理者だった1990年代から、日本社会の弱体化が進み、出生数は80万人を切り、世界2位だった一人当たりGDPも僅か30年で27位にまで急落しました。駅伝レースに例えれば、2位でもらったタスキを、私たちは次の世代に27位で渡そうとしているといえます。少子高齢化は加速し、社会も若者も経済も活力を失っています。女性の社会進出も就業環境改善も世界から大きく遅れているだけでなく、その改善の兆しすら見えません。ジェンダーギャップ指数は、OECD先進国の最下位レベル、世界146ヶ国の116位と低迷している現状です。
「私たちは次の世代に何を渡そうとしているのか?」を思うと焦燥と無念の思いしかありません。若い世代に対する贖罪意識が私のモチベーションになっていると言えるでしょう。
高校の同窓生とともに始めたNPOです。それぞれが50歳直前になり、社会貢献の機会を漠然と探し始めていました。私の高校は女学校が前身で、戦後の共学化後も、学生名簿が女子の五十音で始まり、男子はその後という形式だったなど、男女平等の意識が高い学校でした。卒業三十周年で再会した同窓生との会話から、2004年に男女共同参画をテーマとする社会貢献活動を始めることになったのです。
前年の2003年に成立していた「次世代育成支援推進法」も一つのきっかけだったでしょう。同法で「行動計画」の策定と届出が義務化されていたが、一般市民の注目度は極めて低かったといえます。そこで、全国3,000を超える自治体の「行動計画」を全て読み込むことを目標に、一般市民による草の根の活動を始めました。「日本一ヒマで物好きなNPO」を標ぼう致しました。そこで分かってきたのが、頑張っている自治体の存在です。
今度は「頑張っている自治体の私設応援団」を標ぼうして、「子育て環境ランキング調査(現在は主要103都市)」を2005年から毎年春に発表し、優秀自治体を表彰し続けています。
2005年から始めた「子育て環境ランキング調査」や、それに付随する講演研修活動を通して、男女共同参画などの社会改革は、政府や企業に求めるだけでは進まないという思いが強くなりました。そして、一般市民の力で何ができるかを考え始めました。そんな思いが、祖父の孫育てを通して、家庭参画と若い世代への支援につなげる「祖父による孫育て資格『ソフリエ』認定講座」の開講につながりました。
「父親の子育て資格『パパシエ』認定講座」を含めて2010年から開始し、現在も全国各地で実施しており、市民が自ら実践できる男女共同参画の一形態として定着しております。
一つ目の独自性は、私がNPO活動の傍らで、一般企業を経営をしていることです。現在は米国系IT教育サービス企業の代表をしているが、当社のサービスは、中堅レベルのIT人材を3か月程度の集中研修(シリコンバレー式コードブートキャンプと呼ばれる)で育成し、デジタル革命(DX)を推進する企業や機関への就職を支援するものであります。当社の教育サービスを受講して、社会に出てゆく女性も増加しており、受講生の30%を超えてきています。
当社従業員の性別構成も、全社で女性59%男性35%不区分6%、役員で女性33%男性67%、経営幹部で女性43%男性57%、技術職で女性48%男性42%不区分10%となっており、経営管理職の女性比率が急速に上昇しています。女性デジタル人材の育成と活躍を支えながら、女性の社会進出を促進する現場を持っていることが、NPO活動を後押ししているといえるでしょう。社会変革の実験場があることで、二つの組織体が車の両輪になっています。
二つ目の独自性は、NPOの性別構成が、女性と男性がほぼ同じになっていることです。男女共同参画の分野は、女性が中心になって運動を推進してきた長い歴史を持っています。そのために、多くのNPOなどで女性の比率が極めて高いです。男性が半分を担うNPOの存在はユニークであり、各方面からも注目されております。
前述した「祖父による孫育て資格『ソフリエ』認定講座」「父親の子育て資格『パパシエ』認定講座」に加えて、小学生低学年を対象にした感性教育プログラム「IQNOH教室」、「遊びの鉄人資格『あそぶぎょう』認定講座」、小学生から高校生までの民主主義教育「デモクラ」などをラインナップしております。
講師派遣やライセンス方式など、提供方法は多様かつ柔軟です。現在は自治体や社会施設向けの提供が一般的だが、一般企業や学校などへの提供も行っております。また、ハラスメント防止、デジタル革命(DX)などの啓蒙や実務研修も行っています。
法人名 : NPO法人エガリテ大手前
代表者 : 古久保 俊嗣
設立 : 2004年4月
事業内容
①男女共同参画社会の形成に関する調査・研究事業
②次世代育成支援対策推進法が定める行動指針、行動計画の評価及び公表事業
③男女共同参画社会の形成に関わる広報・出版事業
④男女共同参画社会の形成に関わる講演事業