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【株式会社カンム】
八巻 渉社長インタビュー

【株式会社カンム】<br>八巻 渉社長インタビュー

慶應義塾大学を卒業後、2011年に株式会社カンムを設立。
2016年にアプリから1分で作れるVisaプリペイドカード「バンドルカード」をリリース。
2026年1月には1400万インストールを突破。
2022年3月に第二種金融商品取引業を取得し、同6月に「手元の資産形成に活用できるクレジットカード」Poolをリリース。
2023年3月に株式会社三菱UFJ銀行と資本業務提携を実施。

創業された経緯を教えてください。

私は、幼稚園の頃に初めてプログラミングに触れ、中学生から本格的にコードを書き始めたエンジニア出身の経営者です。父親がソニーのハードウェアエンジニアだった影響もあり、モノづくりへの関心が高く、大学時代には、「実務経験が命」と考え、大学1年からITベンチャーでインターンやバイトをしていました。
2011年、25歳の時にカンムを創業しました。創業のテーマ選びにおいて、「日本の豊富なリソース(人または金)にレバレッジをかけられる領域」として「教育」か「金融」に着目しました。最終的に、自身の強みである「データ解析」との相性が良い「金融」を選びました。

2011年創業当時、日本でFinTechに挑戦することの難しさはどのようなものでしたか。今まで苦労された経験、そこから学ばれたことを教えてください。

2011年当時、スタートアップ界隈の主流はソーシャルゲームやメディア、住宅情報サイトなどであり、金融領域で起業する若手は皆無に近い状態でした。そもそも「FinTech」という言葉自体が存在せず、金融はスタートアップが参入するには「ハードルが高すぎる」「遠い世界」と認識されていました。

2回目のピボットで取り組んだ「CLO(Card Linked Offer:カード決済連動型オファー)」では、クレジットカード会社の決済データが必要でした。当時は社員もおらず、たった1人で都内のほぼ全てのカード会社に飛び込み営業や問い合わせを行いましたが、「どこの馬の骨かもわからないベンチャーに重要なデータを渡せるか」という反応が当然で、門前払いが続きました。
なんとかクレディセゾンとの提携に漕ぎ着けましたが、カード会社のWeb明細を見るユーザーが少なく、広告媒体としての価値が出にくいという構造的な限界に直面しました。また、他社に横展開しようとしても、各社ごとにシステム仕様やセキュリティ基準が異なり、スケールしないという壁にぶつかりました。

既存の金融機関のアセット(データや顧客接点)に乗っかるだけのビジネス(CLO)では、本質的な課題解決もスケールも難しいと痛感しました。これが、自らカード発行主体(イシュア)となり、データを直接扱う「バンドルカード」の構想へと繋がりました。また、メンターからの「顧客の声を聞くためにコールドコール(飛び込み営業)をせよ」という助言に従い、苦手な電話営業や訪問を繰り返した経験が、後の提携交渉の度胸に繋がっています。

株式会社カンムの理念を教えてください。

私たちのミッションは「お金の新しい選択肢をつくる」です。
金融は、経済成長を推進するための重要な要素であり、経済の潤滑油の役割を果たしています。経済成長は、消費または投資を増やすことでのみ、成し遂げられます。

しかし、金融と、個人や法人との間に距離があるという状態は、経済活動にとってマイナスの影響しかもたらしません。例えば、消費や挑戦をしたい人々への資金提供がなければ、経済活動は停滞します。また、余裕資金が投資に回らなければ、お金はただ遊んでしまうだけです。リスクを適切に管理できなければ、人々は保守的になり、経済活動は起こりにくくなります。

これまでの伝統的な「金融」のアプローチは、個人や法人が金融にアクセスするには心理的ハードルが高いものでした。人々の生活や、事業活動、商流の中に、金融がもっと自然に溶け込ませるためには、よりアクセスしやすく、使いやすい金融を提供する必要があります。
私たちはソフトウェアを通じた事業・サービスを作り出すことで、それを実現していきたいと考えています。今後、お金はますますデジタル化され、お金に関する行動はすべてソフトウェアで表現されるようになります。

ユーザーが金融を身近に感じ、自然な形でアクセスすることでより良い生活や企業活動を実現しやすくなれば、結果としてさらなる経済成長を促進することにつながるでしょう。
その未来の実現を加速させていくことが私たちの目標です。

株式会社カンムの詳しい事業内容や強みを教えてください。

当社は2016年に提供を開始した、最短1分で発行できるVisaブランドのプリペイドカード「バンドルカード」や、将来の売上を即資金化できる企業向け資金調達サービス「サクっと資金調達」を提供しています。

技術ベースの金融サービスを開発する企業として、簡単・便利にお使いいただけるサービスを提供しています。どちらのサービスもお申込みからご利用までの時間が短い(バンドルカード:最短1分で発行、サクっと資金調達:最短4営業日でAI審査&入金完了)ことが特長です。

主力サービス「バンドルカード」は、どのような環境の中から生まれたのでしょうか。

前述した通り、「他社のインフラに依存せず、自分たちでデータを持ちたい」「カード会社を作りたい」という思いから、自社でカードを発行するモデル(イシュアになること)を模索し始めました。クレジットカードは資金的に不可能でしたが、「プリペイドカード」であればベンチャーでも参入可能であることに気づき、開発が始まりました。

当時、オンライン決済の利用は広がっていましたが、クレジットカードを持てないや使いたくない人にとっては選択肢が少ない状況でした。また、既存の金融サービスは仕組みが複雑で、ユーザー体験も十分とは言えませんでした。
そうした環境の中で、「スマホだけで誰でも簡単に使える決済手段があれば、もっと多くの人の不便を解消できる」と考えたことが、バンドルカード誕生のきっかけです。

なお、立ち上げは立ち上げで、苦労がありました。

• 資金の壁(純資産1億円):プリペイドカード事業(前払式支払手段発行者)を行うには、法律上、純資産を常に1億円以上に維持する必要がありました。プロダクトも売上もない段階で、この財務要件を満たすために1.5億円規模の資金調達を行う必要があり、非常に困難な状況でした。

• 提携の壁:ビザ・ワールドワイド(Visa)のライセンスを利用するために、BINスポンサー(オリコ)やプロセッシング会社などとの提携が必須でした。当時日本でこのスキームに対応できる会社は数社しかなく、「3社のうち1社でもNGなら事業終了」という綱渡りの交渉を1年以上続けました。

• 開発の遅延:多くの関係者が関わるため、想定外の確認事項が発生し続け、リリースは当初の予定より9ヶ月遅れました。資金が枯渇する恐怖と戦いながらの進行でした。

バンドルカード

株式会社カンムで働く仕事のやりがいについて教えてください。

2026年に10周年を迎える「バンドルカード」は、2026年1月に1400万ダウンロードを達成し、引き続き安定的に成長しています。加えて2025年にスタートした企業向けの資金調達サービス「サクっと資金調達」も、今年は更なる拡大を見込んでいます。当社は技術ベースの金融企業として新たな発想でサービス開発を進めており、様々なことにチャレンジできる事業環境とテック企業ならではの柔軟な働き方がそろっています。また、2023年に三菱フィナンシャルグループ入りしたことで、グループ各社との連携なども進めており、様々なスケールでの事業開発に関わることも可能です。

現在、BtoC事業・BtoB事業ともに積極採用中です。
各部門でカジュアル面談も実施しておりますので、ご興味を持たれた方は当社の採用ページ(https://team.kanmu.co.jp/)からぜひご連絡ください。

日本の金融サービスは、今どの段階にあると見ていますか。

日本国内におけるいわゆる「FinTech」という括りは既に一巡したと見ています。

• 勝者の選別:「儲かるものと儲からないものが見えた」状態です。具体的に収益化できている領域として、BNPL(後払い決済)、法人カード、ファクタリングなどです。

• 銀行の動き:銀行側もインフラ整備を一通り終え、BaaS(Banking as a Service)などの提供を始めていますが、結局のところ収益の柱は依然として「カードローン」と「住宅ローン」に依存しており、そこを突破する新しいビジネスモデルを模索している段階だと分析しています。
そこに預金金利が上がって、預金を集める競争が始まったのが今。ただ、今まで預金はコストで積極的に集めてこなかった銀行が、急に方向転換したため組織がついてこれてない印象です。その模索の中で、新しいサービス、とくに預金を集めることを目的とした新サービスが生まれると思っています。例えば、バーティカル銀行(セグメント毎に区切った銀行、例: フリーランス向け銀行、国内外国人向け銀行)等があり得ると思っています。ステーブルコインもその一つではあります。

総論としては、現在の日本の金融サービスは「初期の熱狂が落ち着き、実利のあるモデルが選別された段階」から、「テクノロジーによってお金の流れそのものを滑らかにし、経済成長に寄与するインフラへと進化させる段階」にあると考えています。

八巻渉社長

「金融は難しい・怖い」という心理的ハードルをどう乗り越えるべきだと考えていますか。

多くの人にとって、金融は仕組み以前に「近づきにくいもの」になっていると思います。だからこそ、難しい説明をするのではなく、まずは直感的に使えて「これなら大丈夫そう」と感じてもらうことが大切です。
金融だと意識させないくらい、日常の延長として自然に使える体験をつくることで、その心理的なハードルは越えられると考えています。

FinTech領域で、これから特に注目しているトレンドは何ですか。

前述の回答の通り、預金集めに貢献する何か、です。まだ誰も答えを持っていませんが、相当額の投資がなされており、早晩何か芽が出てくると感じます。

この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

私たちは現在、「銀行機能のアップデート」という壮大なテーマに挑んでいます。
それは、単に既存の銀行をデジタル化するということではありません。テクノロ ジーとデザインの力で、人々が意識せずとも最適にお金を使え、貯められ、増やせる、そんな「お金の自動運転」のような世界を実現したいと考えています。

カンムは、「バンドルカード」で決済の心理的ハードルを下げ、「Pool」で投資と決済の境界を溶かしてきました。そして今、MUFGグループという強力なアセットを得て、スタートアップのスピード感を持ちながら、社会インフラレベルのインパクトを出せる稀有なフェーズにあります。
私たちは、金融という規制産業のど真ん中で、「難しいからこそやる価値がある」と信じて挑戦を続けています。法規制やシステムの複雑さをハックし、世の中にない仕組みを実装することは、知的な冒険であり、エンジニアリングや事業開発の醍醐味そのものです。

もしあなたが、単なる機能追加ではなく「事業」を作りたい、あるいは日本のお金の流れそのものを変えるような大きな挑戦がしたいと思っているなら、ぜひ一度お話ししましょう。私たちは、自律的に考え、行動し、共に「発明」を楽しめる仲間を全方位で求めています。

株式会社カンム 集合写真

株式会社カンム ロゴ

企業概要

企業名 : 株式会社カンム

代表者 : 八巻 渉

所在地 : 東京都渋谷区恵比寿

設立  : 2011年1月

従業員数: 88名

事業内容
決済・金融サービスの開発・運営
・スマホアプリから即時発行できるVisaプリペイドカード「バンドルカード」
・RBF(Revenue Based Financing)型の企業向け資金調達サービス「サクっと資金調達」
・決済と資産形成を組み合わせた クレジットカードサービス「Pool」

URL  : https://kanmu.co.jp/

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