【株式会社アンテック】
末石建二社長インタビュー
【履歴】
1985.03 OG技研株式会社 入社 開発部勤務
1991.03 OG技研株式会社 退社
1991.09 屋号「アンテック」にて独立
1997.05 株式会社アンテックを設立代表取締役に就任
工学部(電気工学科)の大学を卒業してリハビリ系医療器の企業に就職しました。開発部に所属し、業務遂行の中で電子技術を習得し30歳を迎えた時、「この会社では医療器しか作れない。自分が作りたいものを開発したい」と思い強く持つようになり独立をしました。独立当初は自営業として「電気の事なら何でも」「受けた仕事は最初から最後まで」と言う意味をア~ンに例えて屋号をアンテックとしたのです。当時、〇〇テックと言う名称が流行っていましたのでそれに便乗したようなものです。
自分が作りたいものを・・・の前に食べて行く必要があります。そこでケンウッド(現在の株式会社JVCケンウッド)と技術契約を結び無線機(アマチュア無線・パーソナル無線など)の修理・保守で生計を立てていました。開発とは無いものを生み出す事です。今まで動いていたものが動かなくなった。これを直す事はさほど難しい事では無いのです。まぁ、こう書くと突っ込みが入りそうですが当時の若僧が勝手に思っていた事と解釈して下さい。これで得たお金は勿論生活にも使いましたがその殆どは開発に注ぎ込みました。最初に作ったのは地元・備前焼の焼成時に使用する「窯焚き支援装置」です。備前焼は日本六古窯の一つで2000年歴史があると言われています。有名な産地でも作家数は100人程度と言われる中、備前焼作家は600人を超えていましたし、備前焼に従事している人は当時2000人以上と言われていましたので陶芸業界の東京都みたいな状態だったのです。備前焼は焼締め陶芸と言われるようにその焼成には約2週間を必要とします。この期間を24時間絶え間なく薪を入れる作業は困難を極め、また弟子制度が弱体した近代陶芸では窯を焚く人が確保できず、素人の身内や家族に頼るしかありません。
作家が狙う「時間に対する窯の温度」は予め登録されており、この温度に導くように薪を入れる「タイミング」・「必要本数」を作業者に伝える事で焼成の効率化を図った装置を作ったのです。この機能は学習機能と呼んでいましたが今で言う簡単なAIにより実現しました。備前焼は薪で焼成しますが最初の段階(約5日間 温度では約300度)は乾燥も含めてガスバーナーで炙ります。当時の設備はガスボンベ→減圧弁→バーナーだけで安全装置が無く、煙突から入った風などで火が消されると窯の中にガスが溜まり続けるのです。その状態で再点火するとガス爆発が発生して事故になると言う事で、ガス屋さんの要望を受けて作った安全装置が今、当社の主力商品である紫外検出方式の炎センサーへと繋がるのです。こうして陶芸に使われる色々な機器をラインナップし起業してから6年目に法人化、小さくてもメーカーであることに重きを置き株式会社アンテックを設立しました。
人間関係につきます。岡山県で30年を超えて生き残っているベンチャー起業は当社しか無いそうです。リーマンショック・阪神大震災・東日本大震災など幾度も経営の危機がありました。自分ではどうする事も出来ないから危機になる訳で、そんな時に助けて下さるのは人しかいないと私は思っています。その時に助けて下さった人は私の助けは必要ないですから、その時の様に困っている人が居て、私に出来る事があれば最善を尽くしたいと常に思っています。
座右の銘や大切にしている言葉はありませんが、ベンチャー企業が常に頭に入れて置かないといけないこととして、「諦めたら終わり」と言うことです。開発もそうですが会社運営においても決して諦めないように見えない所では常にもがいています。アヒルが優雅に水面を泳いでいるようなものです。
当社は開発段階で得た技術の特許は出願しない方針を打ち出しています。この為、他社に対しては技術移転では無くコア技術はブラックボックスにして、国内では1業種1社、国外では1国1社に絞って技術の使用を認めているのです。こうした取組みを「製造権」と呼んでいますが、この権利を購入される企業様には特許のような差別化や付加価値に対して期限がありません。これはメリットでもありますがデメリットでもあるのですが、当社では購入された企業様か少しでも長い間、この技術を有効に活かせるように業界では常に1位であることを私だけでは無く、社員全員が心がけていますのでこれが当社の理念であり、終わる事の無い目標だと思っています。
当社は陶芸用電子機器のメーカーとして法人化しましたが、現在では陶芸の焼成技術から培った炎を管理・監視する技術を取り入れ、紫外線検出方式としては世界で唯一屋外でも使用可能な炎センサーの開発・販売を行っています。炎センサーは赤外線検出方式と紫外選出方式に大別されます。波長の長い赤外線は人間や動物、蛍光灯や電熱器など温度も持つ殆どのものから放出されています。この中から炎のみを取り出す事は極めて難しく、構造的にも複雑な事から価格も高額となります。それに対して紫外線は自然界においては太陽光と炎にしか含まれておらず、これさえ分離出来れば炎のみを確実に、しかも高感度で捉える事が出来るのです。当社はこの太陽光と炎の紫外線を波長の揺らぎの違いで判別し世界で唯一、屋外で使用可能な紫外線検出方式の炎センサーを提供しているのです。その性能は10m離れた位置から2㎝程度の炎であったり、70m離れた1mの火柱を最短0.5秒で検出出来るのです。
話は変わりますが、こうした火災を早期に発見するものとして直ぐに頭に浮かぶのは何でしょう?多分、多くの人は消防法で規定された火災報知器のことを思い出されるのではないでしょうか?そして火災報知器は火災の発生を知らせてくれるもの!そう思われていると思います。文字通りの解釈ですよね。しかし、火災報知器の本来の目的は火災を知らせる事では無く、火災による人命救助なのです。これ以上、室内の温度が上がったら・・・、これ以上。煙が充満したら生命を維持する事が出来ませんと言う段階で教えてくれる装置、それが火災報知器なのです。目から鱗ではないですか?例えば天井の温度が65℃以上になれば火災報知器が作動しますが天井がこの温度であれば床は既に火の海です。つまり、火災報知器が鳴った(動作する)時には普通の人でも助かる確立はかなり低いのです。まして、障害を持つ弱者では逃げ切れないと言う事は安易に考えられますよね。
話を元に戻しますが、私共が提供している炎センサーはほんの僅かの炎を最短0.5秒で検出します。この状態で出火を知る事が出来れば逃げなくてもコップに水を入れて掛けるくらいの時間は十分に確保が出来るのです。素晴らしい事だと思いませんか?私共は人命救助を主目的とした消防法ではなく、人命なんて当たり前で、それより先の資産を守る事を目的とした商品作りをしているのです。こうした取組みは損保会社でも認められ、国内ではあいおいニッセイ同和損保の認定を受けている他、昨年はアメリカのFM規格を紫外線検出方式単独では世界で初めて認証されています。
<FM規格とは>
米国に拠点をおく損害保険会社「FM Global社」が中心となり、工場における火災リスクを下げるために確立した認証規格です。 厳しい耐火基準をクリアした製品を
使用することにより火災のリスクが下がり、顧客の保険料も引き下げるというコンセプトです。
私共の業界をカテゴリー別に記載しますと「電気・電機」と呼ばれる強電系があります。その上には「電子」と呼ばれる弱電系があります。オーディオやパソコンなど、特にデジタル技術はこのカテゴリーに属します。一般的な人はよく「電気は目に見えないから難しい」と言われますが、このカテゴリーの上はその見えない電気で作り出す「電波」があり、更にその上には私共が製品に応用している紫外線と言う「光」と言うカテゴリーがあるのです。これらは全てアナログ技術であり、この分野の技術者は全体の1/10000程度しか居ないのではないかと思っています。この様に書くととても難しいと思われがちですが、大学で光を教えてくれる授業なんて殆ど有りませんので入社される方の殆どが光に対しては素人なんです。
今時、パソコンなんて100人中100人以上が知っています。どんな技術者でもオタクと呼ばれる人にはなかなか敵うものではありません。しかし、「光」の業界にはオタクはいませんし、ライバルも少ないですからやっただけの評価は必ず出ます。こうした事が「やりがい」に繋がって来たようにも思いますし、今の社員もそう感じているのでは無いでしょうか?
私共が製品化している紫外線検出方式の炎センサーは炎を見つける事は出来ますが、残念な事に消防法には規定がありません。また、セキュリティー業界においては太陽光の影響を受けて誤報を出す事から「使えないセンサー」と言うレッテルまで貼られており販売には本当に苦労しました。現在ではある程度の認知はありますが、まだまだ知らない人が多いと言う現実があります。ただ近年、私共の商品が注目を浴びる出来事がありました。それが沖縄・首里城火災です。ご承知の通り消防法は総務省の管轄ですが、首里城は文化財でもあるのでその管轄は文科省です。勿論、首里城にも火災報知器は設置されていましたが結局の所、全焼してしまったのです。これにより「消防法では文化財は守れない」と言う気運が広がったのです。そしてちょうど時期を合わせるように倉庫火災や工場火災が多発したことでこの商品が知られるようになったのです。まだまだ知らない人が大多数ですが営業をしたから売れると言う物ではありません。時間はかかりますが噂が広まる事の方が確実なのです。と言う事もあって当社には営業マンはいないのです。
火災は誰にでも、どんな業界にでも降りかかる災難です。火災の無くなる日が来れば良いのですが未来永劫、そうした事は無いと思うのです。例え火災になったとしてもその被害を最小限に抑える。そのお手伝いをさせて頂いております。多少の条件はありますが私共と一緒にこの業界の市場を拡大してみませんか?
企業名 : 株式会社アンテック
代表者 : 末石 健二
所在地 : 本社 岡山県瀬戸内市邑久町豆田116-3
関東開発センター 横浜市中区太田町1-7-1
設立 : 1991年
事業内容: 紫外線応用機器の開発・販売