【株式会社地域新聞社】
細谷佳津年社長インタビュー
細谷佳津年社長略歴
・筑波大学卒業後、国際興業㈱に入社、ハワイ駐在の後、㈱ギャガ・コミュニケーションズ(現ギャガ㈱)に転進
・生駒シービー・リチャードエリス㈱(現シービーアールイー㈱)を経て、2009年に㈱エー・ディー・ワークスに入社
・常務取締役 CFO として経営戦略を立案遂行し、同社の時価総額10倍超えに貢献
・㈱ADワークスグループの専務取締役 CFO、岡三デジタル証券準備㈱の取締役などを歴任し、2022年に㈱エンジェル・トーチを設立、同社代表取締役を兼任
・一橋大学School of Business Administration「HFLP※」第7期生
※Hitotsubashi Financial Leadership Program A course
・2024年より現職
私は2024年2月に当社の代表取締役社長に就任しました。
それまでは、投資家の立場から社外取締役として関わっており、当社は社内外から「フリーペーパーの会社」と認知されていました。最初に当社と出会った時には、フリーペーパー事業は斜陽産業だろうと直感すると同時に、「この事業モデルで上場している意味を見出すのは難しいのでは」と思っていました。
しかし、創業以来40年にわたり、毎週174万世帯に手配りでポスティングする地域情報紙『ちいき新聞』の発行を継続してきた結果、とてつもない財産を獲得していることに気が付いたのです。当社に対する印象が一変し、その可能性に確信を持った瞬間でした。
私は当社が持つ財産を「アセット」と呼ぶことにし、一つ一つを言葉と数値で可視化することによって再定義したいと考えました。
しかし、社内外ともにその価値への認識が追いついておらず、2026年8月までに上場維持基準である「時価総額40億」をクリアしなければならないという状況の中で、もどかしさや歯がゆさとの葛藤がありました。そして、「悠長なペースでは時間切れになってしまう」と感じ、前経営者に直訴したのです。
当社は、地域密着型の生活情報紙『ちいき新聞』の発行を軸に、情報発信および販売促進の総合支援事業を展開しています。
千葉県を中心に毎週発行している『ちいき新聞』の配布を継続してきたことで、他に類を見ない9つのアセットを築いてきました。
それは、
①創業40年の上場企業としての信頼
②2,500人近い配布スタッフ
③174万世帯のラストワンマイルへのリーチ
④6万人の読者とのインタラクティブなつながり
⑤年間7,000社とのお取引
⑥5拠点40エリアの営業網
⑦編集スタッフと130人の地域ライター
⑧デザイン・校正校閲力
⑨配送網
です。
これらのアセットを活かす分野は、無数にあると考えています。
その実現のために、全て自前ではなく、社外のステークホルダー(企業・行政・地域住民など)と連携する「シーパワー戦略」を推進しています。
これは、凋落が止められないと思われている日本各地の地域社会の再生という、非常に大きくて深刻なテーマの解消につながるかもしれません。そう考えると、会社・社員のビジョンレベルにとどまらず、社会が認めるパーパスにさえなり得ます。
これは稀有なチャレンジで、意義深さは計り知れないですし、またとないチャンスでもあるととらえています。
さしあたっては、上場維持基準をクリアするという文脈において、時価総額40億円の達成を目標としています。
その先のハードルとして、2030年までに時価総額100億円を目指すことになりますが、前職での経験も踏まえると、40億から100億への道のりの方がはるかに容易であると感じており、ある意味では楽観的に捉えています。
むしろ、すでに出願済みのAI関連特許(生成AIを活用した心理状態デジタルツインによる広告効果最大化技術)が実用化されれば、そのポテンシャルは、100億円どころか1,000億円規模にも到達し得ると考えています。
これは、投資家でもある私自身の偽らざる直感です。
当社は、創業者が掲げた「人の役に立つ」という経営理念と、「地域の人と人をつなぎ、あたたかい地域社会を創る」というミッションを大切にしています。一方で、当社が上場維持基準のクリアにコミットする上では、「創業者はなぜ上場したのだろう」という疑問に対する答えも必要だと考えました。
実際に創業者がどう考えていたかという事実よりも、現在の私たちがどう意味づけるかという点において、筋の通った考えが重要だと思ったのです。
そして、私なりにこう再解釈しました。誰か一人のオーナーに会社を支配されるというくびきを解き放ち、社員自身が自社の方向性を決定できる状態で地域新聞社を地域社会に残すために上場という道を選択したのだと。
この考えは、現在当社が取り組んでいる「地域共創プラットフォーム」構想とつながります。
「地域共創プラットフォーム」とは、「株式交付」(100%の場合は「株式交換」)という手法を使い、非上場の地元優良企業と当社がグループ会社として協調・共存していくことを可能にする仕組みです。これにより、地域経済の活性化や後継者問題の解決を目指しています。「地域共創プラットフォーム」を通じて、過去の経緯と未来のビジョンが結びつき、上場の意義もより明確になりました。
このビジョンは、日本全体が抱える大きな社会課題を解消できる可能性を秘めており、パーパス級の大義になり得ます。社員としても、大事にしてきた経営理念やミッションを変えることなく未来を描くことができます。
ですからこれは「改革」ではなく、「昇華」だと私は考えています。
私はこれまで5社に在籍し、「自己実現と会社への貢献」が重なり合うよう、心を砕いてきたように思います。特に前職からは、その先にある「社会的貢献」へ寄せる想いが強くなってきており、だからこそ地域新聞社に受け入れてもらえたと実感した時には、大きな喜びと感激がありました。
これまで、既存のセオリーでは処方とならない状況に置かれた企業にあえて身を置き、順風満帆な企業では必要ないような取り組みや、「前例のない挑戦」をしてきた経験が数多くあります。
史上初ではあるものの、「コロンブスの卵」のようなことが多いのですが、それが先駆けとなり、やがて汎用性をもって業界全体に定着するケースもありました。こうした取り組みには、一社だけのインパクトにとどまらず、大きな社会的パラダイムシフトを生み出せる可能性があります。
そんなことが私のパーパスであると、社会が受け止めてくれる時が来れば、大変うれしく思います。
振り返ってみれば、研究と勉強を重ね、執念を持ってこだわり、深く考え抜く――そんなことの連続でした。当社においても同様です。
社長就任直後の臨時株主総会を勝ち切ったことや、例年は季節的要因により赤字計画だった第2四半期においても、決してあきらめずに黒字化を実現したことなど、当社の仲間と一緒に乗り越えてきたすべてが、私にとってかけがえのない経験となっています。
企業名 : 株式会社地域新聞社
代表者 : 細谷佳津年
所在地 : 千葉県八千代市勝田台北1-11-16 VH勝田台ビル5F
設立 : 1984年8月28日
従業員数:285名 (社員157名・パート128名)
事業内容
創業以来40年以上にわたり、フリーペーパー『ちいき新聞』を約174万世帯へポスティング配布してきたことによって築かれた独自のアセットを活用し、販売促進総合支援事業の他、イベント事業・求人事業・地域創生事業などを展開。また、求人や保険といった幅広い業種とのアライアンス、約6万人のコア読者とのインタラクティブなつながりを生かしたテストマーケティング等を通して、新サービスを創出している。